この記事では、プロ野球選手が使用するバットの重さの規定を解説します。
大前提として、プロ野球選手は、公認野球規則で木製バットを使うことになっています。
それでは、プロ野球選手が使用するバットに重さの規定はあるのでしょうか?
プロ野球のバットの重さの規定
公式野球規則には、プロ野球で使用するバットの重さに規定はありません。
しかし、野球全般について、下記のようなバットの長さや形状についての基準があります。
- バットは、なめらかな円い棒であること
- 最も太い部分の直径が2.61インチ(6.6cm)以下であること
- 長さは42インチ(106.7cm)以下であること
- 先端をえぐったカップバットは、くぼみが深さ1.25インチ (3.2cm) 以内、直径1インチ以上2インチ (5.1cm) 以内であること
- カップバットの断面は、椀状にカーブしていなければならず、直角にえぐったり、異物を付着させてはならない
- バットの握りの部分(端から18インチ (45.7cm))に握りやすくする細工は許されるが、18インチの制限を超えて細工したバットを試合に使用することはできない
ただし、アマチュア野球の金属バットについては「900g以下のバットの使用を禁止する」という規定があります。
プロ野球選手のバットの重さは?
プロ野球の主な選手のバットの重さは以下の通りとなります。
イチロー | オリックスブルーウェーブ | 905g |
松井 秀喜 | 読売ジャイアンツ | 870g |
坂本 勇人 | 読売ジャイアンツ | 900g |
岡本 和真 | 読売ジャイアンツ | 890g |
近本 光司 | 阪神タイガース | 890g |
柳田 悠岐 | 福岡ソフトバンクホークス | 880g |
松田 宣浩 | 福岡ソフトバンクホークス | 880g |
山田 哲人 | 東京ヤクルトスワローズ | 900g |
村上 宗隆 | 東京ヤクルトスワローズ | 880g |
岡田 幸文 | 千葉ロッテマリーンズ | 950g |
単純に長距離ヒッターが重いバットを使用しているとか、アベレージヒッターが軽いバットを使用しているということはなさそうですね。
「ホームランを打っていない期間」の日本記録保持者の千葉ロッテ・岡田選手が、この中で一番重いバットを使用しているのを見ると、重ければ飛距離が伸びるということはなさそうですね。
プロ野球のバットの重さへの考え方
バットを重くすると飛距離はのびるのは事実で、かつては、重いバットの方が飛ぶとして1000gのバットを使用した選手もいました。
ただ、普通に考えれば、バットを重くすればスイングスピードは落ちます。
つまり、スイングスピードが落ちることで「結局バットを重くする前と飛距離が変わらない」となる可能性が高くなります。
実は、軽いバットの方がスイングスピードが速くなり、飛距離を伸ばしやすいということがあります。
スイングスピードが上がると、なぜ飛距離が伸びるのでしょう?
下に表したのは、運動エネルギーの公式です。
Kが運動エネルギー(単位 J)、Mが質量(重さ)、Vが速度(速さ)です。
ここで言えば、Mがバットの重さ、Vがスイングスピードです。
運動エネルギーは、「別の物体に衝突して仕事をすることが出来る能力」です。
言い換えれば、バットが「別の物体(ボール)に当たって仕事(跳ね返す)をする能力」です。
この式から分かることは、運動エネルギーは重さMに比例して、速度Vの2乗に比例するということです。
重さが2倍になっても運動エネルギーは2倍ですが、速度が2倍になれば運動エネルギーは4倍になるということですね。
つまり、重さを増やすよりも、速さを増した方が効率が良いということになります。
また、軽くすることでバットコントロールもしやすくなり、手前で変化した球に対して対応しやすくなります。
このようなことから、最近のプロ野球では、バットは軽くするのが主流のようです。
むかしは野球は根性のスポーツって感じでしたけど、やっぱり科学的に考えないといけないですよね。
プロ野球のバットの重さの規定:まとめ
この記事では、プロ野球のバットの重さの規定について解説しました。
公式野球規則に、プロ・アマ共通のバットで長さや形状の規定がありますが、重さについては金属バットが900g以下であってはならないという規定のみで、プロが使用する木製バットに重さに規定はありません。
また、長距離ヒッターは重いバット、アベレージヒッターは軽いバットを使用していると考えがちですが、意外にもそうではありません。
軽いバットでスイングスピードを上げて効率よく打球を飛ばせることや、バットコントロールが重視される現在では、900g以下のバットを使う選手も多いようです。
コメント
k=mv^2について、今固定するべきは運動エネルギーkです。いくらバットの質量を小さくして速さを上げたとしても、問題のkが変化しなければボールの飛距離は直接的に変化しません。そしてkはバットに加わったエネルギーですから、人体から加えられたエネルギーと等しいです。バットの重さによって人体の力を生み出す能力は変化しない(力の入れやすさは変化しますが)はずなので、バットの重さによらず、バットの持つ運動エネルギーは一定だというべきです。真空無重力で考えれば、ボールの飛距離をより出す方法は①より大きなエネルギーを生み出すこと,②それをより多くボールに伝達すること,の2つです。ここで②を満たすために、バットの適切な質量による操作性と安定性のバランスを設定するべきだという説明が正しいと思います。あと、速さを闇雲に上げると空気抵抗が大きくなっていくので、それも少しは要素に入るのかもしれません。
有名選手のバットの重量や基準についてわかりやすくまとめていただき、ネットサーフィンをする身としてはありがたい限りです。ありがとうございました。