MLB球場の形:いびつさに魅了されるMLBファン

MLB

日本では、完全な扇形の多目的球場が多く、個性的な球場はあまり見られません。

そのため、左右対称である必要があると思われるかもしれません。

しかし、実際には一定の広さがあれば自由に形を決めることができます。

一方、野球の発祥国であるアメリカでは、特徴的な球場が多く造られています。

  • チームの中心打者が右打ちの場合には、ホームランが出やすいようにレフトを極端に狭く造ったり
  • ピッチャーに有利になるように広く造ったり

独自の特徴を持っています。

近年は、MLBの試合を観る機会も多く、さまざまな特徴を持った野球場を目にすることができます。

MLB球場の形

ここから、具体的にどのような特徴の球場があるのか紹介します。

左右非対称

かつてのアメリカでは、野球場は空き地に建てられていました。

その土地を最大限に活用するために左右非対称になる球場が多いと言われています。

例えば、ヤンキースタジアムの左中間が399フィート(約122m)ですが、右中間は385フィート(約117m)あります。

これは、かつてのヤンキースの中心打者ベーブ・ルースに有利な球場を作るために造られた名残です。

オラクル・パークは、左中間が364フィート(約111m)に対し、右中間は421フィート(約128m)あります。

そして、フェンスの高さも左中間が8フィート(約2.4m)であるのに対し、右中間は25フィート(約7.6m)もあります。

1990年代後半から2000年代前半にかけて、バリー・ボンズが右翼席場外に「スプラッシュ・ヒット」を量産していました。

スプラッシュ・ヒット:オラクル・パークの右翼フェンス後方がサンフランシスコ湾の入り江になっていて、右翼席も小さいため、場外ホームランが出るとそのほとんどが海に飛び込み、「スプラッシュ・ヒット(Splash Hit)」と呼ばれています。

巨大な壁

1912年に開場したフェンウェイ・パークは、現在MLB球場のなかで、最も古い球場です。

ここは、人気チームボストン・レッドソックスの本拠地です。

フェンウェイ・パークは、特徴的なフィールドの形でも良く知られています。

ボストン市街の土地に限りがあったため、極端にレフト側のフェンスまでの距離が狭くなっています。

レフト線が約94.5m、スタンドもセンター方向に直線的に伸びています。

そのため、簡単にホームランが出ないように、高さ37フィート(約11.3m)の巨大なフェンスが設置されています。

グリーンに塗られたこのフェンスは、通称「グリーン・モンスター」と呼ばれています。

円形球場

1960年代から1970年代にかけて、アメリカではフットボールと共用できるスタジアムが流行しました。

1960年代には、世界初のドーム球場であるアストロドームが誕生し、人工芝も採用され、全国的に広がりました。

多目的スタジアムでは、コンサートなどのイベントを開催することも考慮されました。

そのため、グラウンドを取り囲む観客席が円形になっていて、座席が中心に向いています。

円形のグラウンドでは、ファウルゾーンが広くなるため、可動式のスタンドなどを使ってこのゾーンを有効に利用する必要があります。

多目的に活用するためには、形に制限が生まれ、結果的に似たり寄ったりのスタジアムになりがちでした。

このため、「クッキーカッター・スタジアム」と呼ばれるようになりました。

クッキーカッター・スタジアム:クッキーの型で同じ形のクッキーを何個も作れるのと同じ様に、似た様な形をした兼用スタジアムが建てられたことから、そういう名前が付けられました。

タルの丘

ミニッツ・メイド・パークは、アストロズの本拠地で、特徴的な球場の1つです。

隣には、歴史的建造物「ユニオン駅」があるため、レフト側が狭くなっています。

かつては、ホームからセンターは435フィート(約132.6m)と、MLBで最も長い距離となっていました。

フェンスの手前に傾斜30度のタルの丘があり、その上にフラッグ・ポールが立てられていました。

現在は、タルの丘は撤去され、距離も409フィート(約124.7m)になっています。

タルの丘があった場所には、現在は売店やグループ席が設置されています。

外野フェンスのツタ

シカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールドは、ライト線とレフト線付近に観客席がありません。

そして、フィールドが奥へくぼんだように深くなっています。

そして一番の特徴が、外野フェンスにツタが茂っていることです。

打球がフェンスのツタから取り出せない時は、エンタイトル・ツーベースになります。

照明が設置されたのは1988年で、現在でもナイトゲームは少なくなっています。

これは初代の球団オーナー、フィリップ・リグレーの「野球は太陽の下でやるもの」というこだわりです。

MLB球場の形:むかしあった歪な球場

マンハッタンにあったポロ・グラウンズという球場の形状は、とても歪でした。

野球場とは思えないような歪んだ形をしていて、両翼に比べて中堅方向の距離が異常でした。

実際、グラウンド自体が扇形をしていませんでした。

  • 左翼279フィート(約85m)
  • 左中間450フィート(約137m)
  • 中堅最深部483フィート(約147m)
  • 右中間449フィート(約136m)
  • 右翼258フィート(約78m)

ポロ・グラウンズという名前からもわかるように、この球場は元々団体馬術競技の競技場として作られました。

初代ポロ・グラウンズでは、グラウンドを2つに分けて2試合同時に開催することもあったそうです。

19世紀末に移転すると、ポロ競技は行われなくなりましたが、その後も「ポロ・グラウンズ」として呼ばれ続けました。

1911年に三代目ポロ・グラウンズが火事で全焼し、四代目ポロ・グラウンズが建てられました。

1964年に解体され、跡地には「ポロ・グラウンズ・タワーズ」という高層アパートが建てられています。

MLB球場の形:いびつになったわけ

円形のアストロドームのような「クッキーカッター・スタジアム」と呼ばれた近代的な円形の多目的球場は、徐々に不評を買うようになりました。

広大なファウルゾーン、高いスタンド、左右対称のグラウンド形状、独特の特徴のなさがMLBファンには好まれなかったためです。

そこで、オリオールズの「オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ」はクラシックな特徴を取り入れました。

レンガと鉄骨を組み合わせた外観と、左右非対称なグラウンドなどレトロ回帰をコンセプトに掲げて1992年に開場したのです。

この「新古典主義」の球場は、MLBファンに受け入れられ、本拠地としているオリオールズの観客動員は前年より100万人増となりました。

これを受けて、各地で同様の球場が造られるようになりました。

まとめ

日本でもグリーンスタジアム神戸などでMLBのボールパークを参考にして造られました。

AZDA Zoom-Zoom スタジアム広島も、新古典主義のコンセプトに影響を受けて建設されています。

今後、新たな球場が建設される際には、個性的でな球場がたくさん誕生するかも知れませんね。

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