この記事では、MLBで使用されているQSの意味とランキングを紹介します。
QSとは、投手が先発登板した試合で「どれだけ試合を作れたか?」がわかる指標です。
2023年のQSランキングを追記しました。
MLBのQSとは?
QSとは、Quality Startの略で、日本語では「良好な先発」と訳されます。
特に先発投手を評価する項目のひとつで、具体的には、先発として登板した試合で「6回以上を投げて、かつ自責点3以内」に抑えた時に「1」記録されます。
このQSは、先発投手がどれだけ安定して試合を作れるかを数値化し、1985年頃からMLBで使われるようになりました。
ただし、6回まで自責点3に抑えていたものの、7回に自責点が4になった時はQSは記録されません。
また、QSを記録するほどの好投をしても、
- 打撃陣の援護を受けられずに敗戦投手となった時は「Tough Loss(タフ・ロス)」
- QSを記録できなかったものの勝利投手となった時は、「Cheap Win(チープ・ウィン)」
と呼ばれます。
MLBのQSランキング:2022年
ここからは、2022年で記録されたQSをランキングで紹介します。
MLBのQSランキング(アメリカン・リーグ):2022年
まずは、2022年アメリカン・リーグのランキングです。
順位 | 投手 | 所属チーム | QS | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | フラムバー・バルデス | アストロズ | 26 | 31 |
2位 | アレク・マノア | ブルージェイズ | 25 | 31 |
3位 | シェーン・ビーバー | ガーディアンズ | 23 | 31 |
マーティン・ペレス | レンジャーズ | 23 | 32 | |
5位 | ゲリット・コール | ヤンキース | 21 | 33 |
ジャスティン・バーランダー | アストロズ | 21 | 28 | |
7位 | ジョニー・クエト | ホワイトソックス | 18 | 24 |
トリストン・マッケンジー | ガーディアンズ | 18 | 30 | |
マルコ・ゴンザレス | マリナーズ | 18 | 32 | |
ロビー・レイ | マリナーズ | 18 | 32 | |
シェーン・マクラナハン | レイズ | 18 | 28 | |
15位 | 大谷 翔平 | エンゼルス | 16 | 28 |
76位 | 菊池 雄星 | ブルージェイズ | 3 | 20 |
96位 | 有原 航平 | テレンジャーズ | 1 | 4 |
ワールドチャンピオンのアストロズから上位に2人も出ているのは、さすがという感じです。
MLBのQSランキング(アメリカン・リーグ):2023年
こちらは、2023年アメリカン・リーグのランキングを紹介します。
順位 | 投手 | 所属チーム | QS | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | ゲリット・コール | ヤンキース | 24 | 33 |
2位 | クリス・バシット | ブルージェイズ | 21 | 33 |
3位 | ケビン・ゴーズマン | ブルージェイズ | 20 | 31 |
ジョージ・カービー | マリナーズ | 20 | 31 | |
パブロ・ロペス | ツインズ | 20 | 32 | |
フランバー・バルデス | アストロズ | 20 | 31 | |
7位 | カイル・ブラディッシュ | オリオールズ | 18 | 30 |
ルイス・カスティーヨ | マリナーズ | 18 | 33 | |
ローガン・ギルバート | マリナーズ | 18 | 32 | |
10位 | ザック・エフリン | レイズ | 17 | 31 |
カイル・ギブソン | オリオールズ | 17 | 33 | |
ソニー・グレイ | ツインズ | 17 | 32 | |
20位 | 大谷 翔平 | エンゼルス | 12 | 23 |
32位 | 菊池 雄星 | ブルージェイズ | 9 | 32 |
52位 | 前田 健太 | ツインズ | 6 | 20 |
103位 | 藤浪 晋太郎 | オリオールズ | 1 | 7 |
MLBのQSランキング(ナショナル・リーグ):2022年
つぎに、2022年ナショナル・リーグのランキングです。
順位 | 投手 | 所属チーム | QS | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | ダルビッシュ有 | パドレス | 25 | 30 |
2位 | サンディ・アルカンタラ | マーリンズ | 24 | 32 |
3位 | マイルズ・マイコラス | カージナルス | 22 | 32 |
4位 | コービン・バーンズ | ブリュワーズ | 21 | 33 |
マックス・フリード | ブレーブス | 21 | 30 | |
ジョー・マスグローブ | パドレス | 21 | 30 | |
7位 | カイル・ライト | ブレーブス | 19 | 30 |
フリオ・ウリアス | ドジャース | 19 | 31 | |
クリス・バジット | メッツ | 19 | 30 | |
ローガン・ウェブ | ジャイアンツ | 19 | 32 | |
ザック・ゲーレン | ダイヤモンドバックス | 19 | 31 |
ドジャーズから1人しかいないということは、攻撃力でリーグを制覇したということですね。
MLBのQSランキング(ナショナル・リーグ):2023年
こちらは、2023年ナショナル・リーグのランキングを紹介します。
順位 | 投手 | 所属チーム | QS | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | ローガン・ウェブ | ジャイアンツ | 24 | 33 |
2位 | ザック・ウィーラー | フィリーズ | 21 | 32 |
3位 | ザック・ガレン | ダイヤモンドバックス | 20 | 34 |
ブレイク・スネル | パドレス | 20 | 32 | |
ジャスティン・スティール | カブス | 20 | 30 | |
6位 | コービン・バーンズ | ブルワーズ | 19 | 32 |
7位 | ミッチ・ケラー | パイレーツ | 18 | 32 |
メリル・ケリー | ダイヤモンドバックス | 18 | 30 | |
スペンサー・ストライダー | ブレーブス | 18 | 32 | |
10位 | セス・ルーゴ | パドレス | 17 | 26 |
ヘスース・ルサルド | マーリンズ | 17 | 32 | |
12位 | 千賀 滉大 | メッツ | 16 | 29 |
35位 | ダルビッシュ有 | パドレス | 10 | 24 |
MLBのQS率とは?
QS率とは、投手が先発登板した試合のうち、QSを獲得した率を表します。
QS率は下記の計算式で求めることができます。
QS率 = QS ÷ 先発登板数
投手を評価する指標として「勝利数」がありますが、大量失点しても味方がそれ以上の得点したり、監督の采配によるところが大きく影響してしまうため、純粋な投手の評価とすることはできません。
しかし、QS率であれば、その投手がどれだけ安定して試合を作れるかを知ることができます。
MLBのQS率ランキング:2022年
ここからは、2022年で記録されたQS率をランキングで紹介します。
MLBのQS率ランキング(アメリカン・リーグ):2022年
順位 | 投手 | 所属チーム | QS率 | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | フラムバー・バルデス | アストロズ | 83.9 | 31 |
2位 | アレク・マノア | ブルージェイズ | 80.6 | 31 |
3位 | ジャスティン・バーランダー | アストロズ | 75.0 | 28 |
4位 | シェーン・ビーバー | ガーディアンズ | 74.2 | 31 |
5位 | マーティン・ペレス | レンジャーズ | 71.9 | 32 |
6位 | シェーン・マクラナハン | レイズ | 64.3 | 28 |
7位 | ゲリット・コール | ヤンキース | 63.6 | 33 |
8位 | トリストン・マッケンジー | ガーディアンズ | 60.0 | 30 |
9位 | 大谷 翔平 | エンゼルス | 57.1 | 28 |
10位 | マルコ・ゴンザレス | マリナーズ | 56.3 | 32 |
ロビー・レイ | マリナーズ | 56.3 | 32 |
QS率にすると、大谷投手がチームから唯一人TOP10入りしました。投手としても、抜群の安定感です。
MLBのQS率ランキング(ナショナル・リーグ):2022年
順位 | 投手 | 所属チーム | QS率 | 先発 |
---|---|---|---|---|
1位 | ダルビッシュ有 | パドレス | 83.3 | 30 |
2位 | サンディ・アルカンタラ | マーリンズ | 75.0 | 32 |
3位 | マックス・フリード | ブレーブス | 70.0 | 30 |
ジョー・マスグローブ | パドレス | 70.0 | 30 | |
5位 | マイルズ・マイコラス | カージナルス | 68.8 | 32 |
6位 | タイラー・アンダーソン | ドジャース | 64.3 | 28 |
7位 | コービン・バーンズ | ブリュワーズ | 63.6 | 33 |
8位 | カイル・ライト | ブレーブス | 63.3 | 30 |
クリス・バジット | メッツ | 63.3 | 30 | |
10位 | フリオ・ウリアス | ドジャース | 61.3 | 31 |
ザック・ゲーレン | ダイヤモンドバックス | 61.3 | 31 |
QSに続きQS率でもダルビッシュ投手が1位です。大谷投手とともに優秀な成績を収めていて、日本のファンとしては鼻が高くなっちゃいます。
NPBにおけるQS、QS率
日本のNPBでは、先発投手の評価としてのQSをあまり語られることはありませんでしたが、2008年頃から、一部のマスコミで使用されるようになってきています。
2010年には、12勝のダルビッシュ投手(当時日本ハム)に対して涌井投手(当時西武)は14勝を挙げ、ともに大きくチームに貢献しました。
しかし、シーズン後の契約更改では、涌井投手はダルビッシュ投手に大きく水をあけられ、話題になりました。
しかし、ここで2人のQS率は、ダルビッシュ投手が84.0なのに対して、涌井投手は59.3であり、契約更改での年俸の差は致し方ないという論調でした。
なお、2013年には、24勝0敗の驚異的な成績を挙げた田中将大投手(当時楽天)が、勝率100%どころか、QS率も100.0を挙げ、圧倒的な安定感を示しました。
まとめ
この記事では、MLBのQSとQS率について解説するとともに、2022年のランキングを紹介しました。
投手の信頼感の指標として「勝利数」で表されることがおおいです。
特に先発投手が、6回まで自責点3以内に抑えて、「試合を作った」とされる時にQSが記録されます。
そして、先発登板した試合数に対して、どれだけQSを獲得したかを示すのが「QS率」で、先発投手の安定感を数値化することができます。
日本のNPBでも使用されるようになってきていて、契約更改のときに大きな影響を与えることがあります。
最近では、QSをさらに上回るHQS(High Quality Start)と言われる指標で、「7回以上を投げて、かつ自責点2以内」という指標も提唱されています。
ただ、QSやQS率、HQSだけでは投手の本質的な評価をするには難しく、勝利数や防御率などと合わせて総合的に評価することが多いようです。
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